ストロンチウムを測定すべき
環境省は、汚染土再利用を含む汚染廃棄物後始末について、有識者会議「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」で2015年より議論をしています。
過去の議論を見直していて、気になる点がありました。戦略検討会第15回(2023年10月17日) 石井慶造東北大学大学院名誉教授によるこんな発言です。
問題はセシウム以外の放射性核種というのが、実は帰還困難地域で、結構高い可能性があるという話をしたいと思います。48ページに除去土壌は、ストロンチウム90が2.5 Bq/kgで、これは以前からあった濃度と同じだとしていますが、これは除去土壌なので、放射能濃度が高いところから持ってきたものではないですね。大体は福島県の濃度が低いところから持ってきて、しかも5cm厚の土を取っているので、薄まっているのです。だから、もともとあったストロンチウムの濃度が薄まっているということになります。文科省が2011年に調べた結果では、表面の濃度の測定値を見ると大体100分の1です。これは、飯舘村とか浪江とか川俣とかといった領域の話です。それらから外れたところは結構低くなってるので、しかもは薄まっているので、当然こういう低い値になるだろうと考えられますので、これが基本だとは思わないで欲しい。今言った飯舘とか川俣とか浪江とか、そういった原子力発電所に近いところではストロンチウムの濃度が高い可能性があります。実際、茨城大の先生が、毎年魚を渓流に放流してその汚染状況を調べているんですけれど、その魚が、川に飛び込んでくる虫を食べているようですけれど、汚染されているようです。すなわち、その虫が汚染されてるわけで、そのあたりは汚染されてると考えられる訳です。魚からはセシウム137だけでなくストロンチウム90も一緒に観測されます。そういうわけで、原子力発電所に近い地域でのストロンチウム90の測定をしっかり行うことを、住民の安心のために将来に向けた計画に入れておかないといけないと思います。特にセシウムは体に入っても、僕みたいな年寄りでは大体70日ぐらいでその半分が出ますが、ストロンチウムは一旦取り入れたら50年経たなければ半分にならないんですね。ストロンチウム90の生物学的半減期は物理的半減期よりも長いんですね。従って、新たにストロンチウムを摂取するということは蓄積していくということなので、徐々に蓄えられ、段々と濃度が高くなるということですね。脊髄あたりのところで濃度が高くなれば、病症を起こす可能性も出てくるということで、セシウムとは違うので、この辺をしっかりと考えると、きちんと測定して、除去をどうするのかとか、そういったことを考えていく必要があると思います。ここでは、除去土壌は全部基準値未満だったからオーケーだと言っていますけど、現実には、福島県内の濃度が高いところ、すなわち原子力発電所に近いところではきちんと測ってみないといけないんじゃないかなと思っております。この辺を気をつけてください。
これに対し、環境省は先行して汚染土1つを調べたこと、今後10検体を調べる予定であること、また事故直後の文科省の結果を紹介し、10万㏃/㎏以上の土壌であれば考慮すべきであるが、再利用に使うのは8000㏃/㎏以下なので問題ないということを示唆しています。
しかしこれに対し、石井委員はこう反論しています。
ちょっといいですか、これ見るとセシウム濃度が約200 Bq/kgぐらいでも、ストロンチウム濃度がかなり高い場所があるんですよ。だから場所によって違います。セシウムはカリウム的な動きをするのに対して、ストロンチウムはカルシウム的な動きをするので、土の中でどのようになっているのか、セシウムは大体表面に留まってるんですけど、カルシウムがどういう動きをしているのかまだ分かっていないので、この辺もきちんと調べていく必要があるので、発言したわけです。濃度によっては、危険性はかなりセシウムよりもはるかに高いので、よろしくお願いします。
古本調査官:こちらの方の調査結果の整理、特に移行の部分についてまたご助言いただけるとありがたく思っています。引き続きよろしくお願いいたします。
他の委員からは何のコメントもありません。
調べたところ、ストロンチウムについては、2024年になってから検討され始めていることが分かりました。戦略検討会が始まった2015年以来、ストロンチウムについて最初に発言したのは2018年の安全性評価ワーキンググループ(WG)で、田上恵子委員が
環境中にはもうどのぐらい放出されているというデータがあるので、ストロンチウム90にしても、プルトニウムにしてもデータがある以上は評価しておかないと心配になってしまうと思いました。
と言ったきり。(田上委員は農地への汚染土利用を進めるべきという推進派です)
その次に今回の石井委員の発言があり、2024年になって12サンプルの調査を行っただけです。
放射線の専門家が揃っている有識者会議でありながら、何ということでしょうか。
ちなみに石井委員も大の汚染土再利用推進派で、東北大学大学院在籍中の2012年、福島市で汚染土の水洗浄の実験を行い、粘土に濃縮した放射性物質を放射線源として利用する研究を行っています。
水洗浄による汚染土壌の除染効果と減容効果
ストロンチウムや他の核種を無視した形で汚染土が全国にバラまかれることは何としてもやめさせなければなりません。
破れたフレコンバッグからバラまかれた汚染土(仮仮置き場)
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