日経記事(8月12日)汚染土再利用 福島中通りスマートIC、道路盛り土が候補

  8月12日の日経新聞デジタル(有料)に、始まる除染土再生利用、埋め立て・盛り土が候補 課題は地元理解 という見出しの記事が掲載されました。

 林官房長官は今月内に最終処分に向けた工程表を公表する意向を示していますが、日経の記事はこれに先行して以下の2つの具体的な候補を伝えています。

①海面埋め立て

②高速道路、国道の盛り土

(以下、要約)

①広島大学工学部の研究チームが、工場廃水に含まれる有機水銀化合物で港湾が汚染された熊本県水俣市の事例などを参考に海面埋め立て処分に利用した場合のコストを試算した。汚染土に含まれる放射性物質が海中に漏れないよう遮水材に詰めて埋め立てると、通常の土を使う埋め立て事業と同程度の費用に収まった。

②高速道路のインターチェンジ(IC)は全国の自治体で誘致活動が相次ぐ。福島県内でも中通り地域のスマートIC計画を巡り、政府関係者が汚染土の活用に向けて動いている。土木関係者によれば、公共事業が盛んだった高度成長期に比べて土壌は手に入りにくいという。山を崩すなど環境問題に対する高まりなどが背景にある。


 福島県は土建業者が多く、特に3.11以降、道路建設が引きも切らない状況ですが、中通りのスマートインターチェンジ計画とは、すでに整備が進み切っている中で、これ以上一体どこに造るというのでしょうか。


 福島県の道路計画を探しましたが見つけることができませんでした。一つ上げるとすれば、福島空港と相馬港・小名浜港の3つの物流拠点へのアクセス道路整備が強化される可能性でしょうか。


 現時点でこれ以上の情報はありませんが、注意すべき点として、

「高度成長期に比べて土壌は手に入りにくい」
「山を崩すなど環境問題に対する高まりなどが背景にある」

を挙げたいと思います。

<疑問1>土壌が手に入りにくい?

 まず、公共事業の残土が全国で問題となっていることは周知の事実であり、その最たるものが28人もの死者を出した熱海の土石流であったことは記憶に新しいところです。桁違いのリニア残土も渦中の問題です。

<疑問2>「山を崩すなど環境問題」があるから、いま中間貯蔵施設にある汚染土を使う方が環境によい?

 これは、脱炭素ビジネスに結び付けたいという意図があるためです。今、あらゆる業界や自治体でCO2削減が求められており、この取組みがないと投資が呼び込めない、補助金が受けられないようになっています。このため汚染土再利用を実施する事業者のために、この要素を加味する必要性があるのです。

 汚染土の由来つまり除染に始まり、ダンプ200万台分の汚染土を運び、また再利用するという全工程で、計り知れないCO2をすでに排出しています。これを無視して、山から新たに土を切り出す際のCO2と比較すると中間貯蔵施設から使った方が少ないなどと言っているわけで、いかに詐欺的、欺瞞的な説明であるかは明らかです。

 ちなみに、この件を発言したのは佐藤努委員(北海道大学大学院教授)です(議事録)。汚染土を受入れる自治体に、カーボンクレジットとして付与する仕組みを導入することで、自治体が削減できない分を補うことができる、これをインセンティブとすればよい、などとしています。

 佐藤委員は、数ある関連の環境省有識者会議のほぼすべてにおいて中心的役割を果たしている推進論者で、9月6日に開催されるパネルディスカッションにも登壇されます。
 動画によると、海外のウラン鉱山での勤務経験があり、汚染土再利用から受ける被ばく量は自分の経験から安全だとしつつ、年間1ミリシーベルトについては専門外なのでよく分からない、などとしています。有識者会議委員がいかにいい加減で無責任であるかの一例だと思います。




コメント

  1. 「高度成長期に比べて土壌は手に入りにくい」としても「受け入れ先がない」。
    中間貯蔵施設における除去土壌等の減容化技術等検討ワーキンググループ(第6回)議事録 27頁
    https://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/investigative_commission/pdf/proceedings_240712.pdf
    (織委員)「今、建設廃棄物のリサイクルの国土交通省の議論も関わらせていただいている中で、やはり受け入れ先が今極端にない。路面材にしても、スラグにしても普通の建設廃材についても、そんな状況の中で、再生利用したものが大量に出てくるものが、本当に受け入れ先があるのかどうか、そこの確保がなければ幾ら技術的にやっても、結局不法投棄に流れてしまう」

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