汚染土官邸で再生利用「被ばくは無視できるレベル」

  27日全閣僚会議が開かれ、汚染土を官邸で再生利用するという初の本格事業の方針が発表されました。実は実務を担っているのは閣僚ではなく、官僚の構成する「幹事会」で、閣僚はこの成果を受け取って公表しているだけで、つまり政治主導を装っているわけですが、幹事会の資料は今のところまだ公開されていません。

 公表された環境省の新たなポスターには「被ばくは無視できるレベル」などと書かれています。「被ばく受忍」の強要であり、強く抗議します。

作業員の被ばくは「IAEAの安全基準に合致」しており年間1ミリシーベルト以下(なので安全)と書かれているが、この評価について専門家は反論している。「環境省は8000Bq/kgという濃度は10000Bq/kgより小さいので、電離則で定義された放射性物質ではないと主張しているが、この場合の線源の総Bq数は~20兆Bqである。これを放射性物質ではないということはとんでもない詭弁といわざるをえない。」(黒川眞一氏「8000ベクレル土壌がもたらす被曝影響」原子力市民委員会発行資料

配布資料

 福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けた再生利用等の推進に関する基本方針(案)等について(環境省)(PDF/1,897KB)

 
福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けた再生利用等の推進に関する基本方針案(PDF/282KB)

 「復興再生利用に対する国民の幅広い理解醸成を図るという観点から、官邸での利用の検討を始めとして政府が率先して先行事例の創出等に取り組み、復興再生利用を推進していく。」

と書かれています。また、

 「復興再生利用への協力の機運醸成に係る取組を、「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」等の場も活用しながら、各府省庁が一丸となって幅広く展開する。」

とあり、タスクフォースを見ると、ALPS処理汚染水の風評被害対策であることが分かります。タスクフォースの構成員は、復興大臣以下、防衛省まで入っており、外務省の構成員に軍縮不拡散・科学部長を追加するとあります。

 軍縮不拡散・科学部|外務省 外務省HP

 (引用)軍備管理・軍縮と不拡散、科学技術、原子力の分野は、日本の外交政策上の比重が高まっている分野です。これらの分野には、核兵器をはじめとする大量破壊兵器やミサイルの不拡散、通常兵器の移転問題などに関する様々な課題への対応、核融合など先端科学技術の開発と利用における国際協力、原子力の平和的利用という諸問題があり、これらの分野における日本の積極的な参加が期待されています。

 軍縮不拡散・科学部は、軍縮不拡散・科学部長のもと、これらの分野において、専門的・科学的知識を踏まえつつ、横断的・統一的な外交政策を策定し一層効果的に実施することを目的として、関連の課室によって構成されており国際会議への参加、国際条約締結のための協議及びその実施を行うとともに、国連その他の国際機関の活動へも積極的に参加しています。

 汚染土の全国へのバラマキは、「不拡散」の理念や取組みに反するのではないでしょうか。


 原子力の平和的利用|外務省 

 原子力安全

 核セキュリティのページを見ると、上のイラストとともに放射性物質発散装置(ダーティー・ボム:汚い爆弾)や核のテロからの防止を説いています。いわゆるCBRNというものです。原子力平和利用と核拡散リスクは隣り合わせであり、同じ外務省担当部局が所管する矛盾した政策で、核の平和利用そのものがあってはならないのです。汚染土再生利用は、この観点から爆発を伴わないダーティー・ボム(Rテロ)に等しいと言えるのではないでしょうか。
 改めてその危険性を訴え、汚染土再生利用に強く反対します。



以下、報道より

東京電力福島第一原発事故の除染土再生利用“政府が率先”基本方針 理解醸成には課題 | NHK | 環境省

 環境省がことし3月に再生利用を行うための基準やガイドラインを定めたことを受けて国民の幅広い理解を得るため、総理大臣官邸の敷地内で再生利用を行うなど、政府が率先して先行事例の創出に取り組むとしています。(記事より)

 記事の中で、NHKが先月、全国47都道府県を対象にアンケートを行った結果が掲載されています。

▼最終処分については

▽「受け入れる」0

▽「条件付きで受け入れる」0

▽「受け入れない」5

▽「どちらともいえない」26

▽「その他」1

▽回答なし15


▼再生利用については

▽「受け入れる」0

▽「条件付きで受け入れる」0

▽「受け入れない」3

▽「どちらともいえない」30

▽「その他」1

▽回答なし13

最終処分、再生利用ともに回答しなかった東京都
「国の関係閣僚会議で除去土壌などの減容・再生利用についての議論が進められている。最終処分及び再生利用に向けて、国が引き続き必要な措置を講じていくものと考える」

最終処分、再生利用ともに回答しなかった大阪府
「国より具体的に、自治体に対して何も示されていない状況であり回答は控える」

最終処分、再生利用ともに「どちらともいえない」と回答した福岡県
「現状では国民の理解が進んでいるとは言い難く、国による理解醸成の取組みを進めることが先決であり、今後の国の動向を注視していく」

「受け入れない」と回答したのは
▽最終処分は山形県、栃木県、山梨県、鹿児島県、沖縄県の5県
▽再生利用は山形県、鹿児島県、沖縄県

 環境省の戦略検討会ワーキンググループ委員である保高徹生氏のコメント:

 産業技術総合研究所の保高徹生副研究センター長「『どちらともいえない』という回答が多かったことが、ポイントだ。現段階で判断できる情報が出ておらず、検討する材料が不足しているのではないか」「都道府県や自治体に環境省から情報を伝えることが重要だ。住民をいちばんよく知っている人たちに現状や安全性、課題を理解してもらった上で取り組むことが重要なポイントだ。最終処分の期限の2045年ははるか先のように感じるかもしれないが、合意形成や立地設定などを考えると実は時間は残されていない」
 

自民・佐藤正久参院議員「総理、官邸での再利用やりませんか」 石破総理「ぜひやりたいと思います」
浅尾慶一郎環境大臣「現時点で、具体的にどういう規模でどうということについては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います」

佐藤正久氏は福島県出身

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