飯舘バイオマス発電火災 素人レベルの設計と運用体制  

  飯舘村のバイオマス発電所が、昨年12月に火災を起こし停止しており、3月13日に運転再開していたことが分かりました。

★3月17日青木さんのコメントを以下に追加しました。

飯舘バイオパートナーズ株式会社 - 飯舘村ホームページ



以下、飯舘バイオパートナーズ株式会社HPより



飯舘みらい発電所ボイラーエリアにおける火災の発生 | 飯舘バイオパートナーズ株式会社


営業運転を再開しました。 | 飯舘バイオパートナーズ株式会社


添付資料 飯舘みらい発電所 設備火災の調査結果および対応について

 添付資料によると、火災の発生経緯と原因、再発防止策が以下のように提示されています。


1. 火災の発生経緯 

燃料搬送系インバータ機器の交換作業中に通信線が断線し、この通信線を介して監視・制御していたシステムが停止しました。その影響で発電所の自動停止機能が作動しましたが、一部の送風機が正常に停止せず、ボイラ内の圧力が通常より上昇しました。 

その結果、ボイラから燃料搬送導通路(以下、導通路)へ約400℃を超える熱風が漏出。導通路内に熱と酸素が供給されたことで燃料が発火し、火災が発生しました。


2. 火災の原因 

ボイラから空気を排出する送風機は停止したものの、空気を供給する送風機が稼働し続けたため、ボイラ内の圧力が異常に上昇したことが主な原因と考えられます。


3.(略)


4. 再発防止対策 

今回の調査結果を踏まえ、外部専門家の意見を取り入れ、以下の対策を実施しました。 

□ 監視制御システム:監視制御回線の異常発生時の影響を小さくするため、通信構成を細分化 

 自動停止機能:ボイラが安全に停止するよう設計を見直し、改修

 ボイラ圧力管理:ボイラ圧力が異常上昇した場合、確実に空気を引き抜く送風機を直接操作できる仕組みに改修 

 定期的な社員研修:異常発生時の対応を徹底し、再発防止に向けた運転員のスキル向上を図る 

(以下略)


 元プラント技術者の青木一政さん(ちくりん舎副理事長)は以下のように分析されています。

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 低レベルなトラブルですね。以下が問題と考えます。

そもそも、何故、インバーター交換が必要になったのか、報告書には書いていない。

インバーターの寿命による定期交換?まだ稼動して数年、寿命とは考えにくい。

燃料搬送系で何かの原因により、モーター停止、燃料搬送できなくなった。


⇒この場合は、搬送機器に何かが挟まるなどしてモーター過負荷で停止、同上理由で搬送機器が破損した、インバータ自身が突発故障で停止した、のどれかを区分けしなければなりません。それが書いていないということは、このプラントの運転員、保全担当者、運転責任者がおそろしく未熟か素人だということ。


※実際は、インバーターの交換は不要で、燃料搬送系の挟まりとか引っかかりを解除で復旧したかもしれない。これが原因でインバータが停止、アラームを出していて、現場を確認せずいきなり、インバータ交換に入ったとすれば、恥ずかしくてその顛末は書けませんよね。


 そもそも、ボイラー燃焼(稼働中に)、燃料搬送系のインバーター(モーター可変速駆動装置)を交換するのが問題。

何故、稼働停止後に、交換を行わなかったのか。


「インバータ交換作業中に通信線が断線」とあるが、作業時に何故、通信線が「断線」したのか?

⇒推定ですが、通信線を切ってしまったのではなく、交換作業でインバーターに接続されている通信線を外したのではないか。

⇒このため、全体の通信が途絶えたというのが本当ではないか。

通信線断線で自動停止機能が作動したが一部の送風機が正常に停止せず⇒これは、システムの停止シーケンスのミス(ソフトのミス)

自動停止機能のテストをしていなかったのか?

再発防止策に、燃料搬送系のインバーター交換を稼動中に実施した指示系統の問題(運転責任者の問題)がありそうだがそれが対策として挙がっていない。

 

 つまり、システムの設計不良、システム運用責任者のシステム理解度不足、その上で、インバータ故障時の対応ルールがない(または不適切)。

 素人レベルのシステム設計、それを発見できない試運転体制、素人レベルの運用管理が問題のような気がします。


 飯舘バイオマスは、汚染土の高い樹皮をわざわざ集めて焼却するバイオマス。言ってみればマイクロ原発のようなもの。

これが火災を起したら、ホッパやサイロにある大量の汚染樹皮の火災、放射能拡散。最悪は周辺の未除染の森林に飛び火して放射能汚染林の山火事に拡大したかもしれない。そういう意味で極めて深刻な事故です。

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 起こるべくして起きたというべきかもしれません。

 そもそもこの事業者は、この場所で環境省の放射能汚染廃棄物を焼却する仮設焼却炉を建設・運転していた企業(IHI、日揮、熊谷組)※であり、深刻な被ばく労働問題を引き起こしたことにより訴訟を起こされています。

 バグフィルターの代わりにタイベックススーツのズボンを代用するなど、数えきれない「ヤミ作業」と劣悪な被ばく労働の温床となっていた事業所の跡地で引継がれた同じ企業らによるバイオマス発電で、またしても「素人レベルの」事故が引き起こされたのです。

 

 20年間も放射能汚染された燃料を燃やす同社のバイオマス発電で、またしても同じような被ばく労働が起きないと保証できるでしょうか。


 裁判を一緒に支援してきた亡き筒井哲郎さん(元プラント技術者)は、被ばく労働問題をこのように総括されました。


 見てきたように、この設備設計および作業環境は、放射能汚染のない一般的な焼却設備の作業環境と比較しても著しく劣悪である。一般の恒常的な産業設備や公共設備と比較して、設備設計および運転管理が悪く、作業環境の改善状況も劣悪である。除染事業の一環として、多数の減容化施設が建設されたが、短期間に業務を終了させるということと、それに伴って短期契約の作業者を雇用するという条件が、このようにずさんな作業を横行させたと考えられる。このような作業が、本来環境保全を使命とする環境省の事業において行われていたこと自体、にわかに信じがたい。

原子力市民委員会 特別レポート7『減容化施設と木質バイオマス発電――肥大化する除染ビジネス、拡大するリスク』 | 原子力市民委員会 より



※ 被ばく労働問題は日揮とその下請け会社が引き起こし、訴訟中に日揮は撤退、IHI環境エンジニアリングは神鋼環境ソリューションに統合された。焼却事業終了後、神鋼と熊谷組が残り、東京電力とともにバイオマス発電事業を行うこととなった。



 飯舘村バイオマス発電の建設には、風下地域である「南相馬市20ミリシーベルト撤回訴訟原告団」有志の方々を始め、ちくりん舎とともに多くの賛同団体の声を集めて反対の声を上げてきました。引き続き注視していきます。

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