カヤの外に置かれる地権者 中間貯蔵施設環境安全委員会傍聴記

  第26回中間貯蔵施設環境安全委員会が8月26日、大熊町の復興再生拠点「linkる大熊」で開かれオンライン視聴しました。(資料は上リンク参照)
 会議は資料のみが公表される形となっており、オンライン配信は中間貯蔵施設地権者会長の門馬好春さんらの強い要望により数年前から「当日の1回限り」で実施されることになったものです。しかしオンライン配信についての事前告知は門馬さんにすらありません。門馬さんが毎回、委員会事務局である県に問い合わせて日時とアクセス方法を教えてもらう、というのが実情です。
 加えて、オンライン配信では資料の掲示がなく、会場の風景が映し出されるのみ、つまり議事に関しては耳から聞くだけという状況でした。公開したくないという意識がありありです。

中間貯蔵施設工事情報センターより

 環境省から一通りの説明の後、3名の委員から、先日の測定値の不正事件について厳しい意見が相次ぎました。―中間貯蔵施設内にある雨水や地下水の放射性物質濃度を測定する装置の一部で、2021年5月以降、濃度が実際より高く測定されていたことが発覚。測定や、値にずれがないかの校正を行った業者が報告書を不正に作成していた―という不可解な事件です。 

 環境省は、再発防止策として以下を提示しました。

1.測定機器の校正方法を事前に提出してもらい、環境省と有識者で確認する。

2.現場での校正の際にも、同省と有識者が立ち会い、現場の管理を徹底する。

3.今回の業者さんに、機器の検討もしていただく。

 報道で「刑事告発を検討する」とされていた割には、あまりにもあっさりとして、なおかつ業者への過度な気遣いが見られ拍子抜けしました。詳細な事実情報を望みます。

 その他の意見として、住民の方から除去土壌を利用した「盛土実証事業」の結果についてや、公共事業での利用先確保の検討結果、そして全国アンケート調査で「県外最終処分」への理解が進んでいないことについての不満、不安などが寄せられました。

 環境省はいつものようにマニュアル的で情報を小出しにするような対応で、委員らの不満は解消されていないように見えました。

 別の大熊町の住民が遠慮がちに発言しました。その言葉に耳を疑いました。

―自分の家屋と地区はいつ除染されるのでしょうか。先祖代々の土地が、どのタイミングでどの段階で解体され、除染が終わるのか、どの地区がどのくらいの間にどのように解体されるのか、スケジュールを示していただけると安心につながります。ふるさとがなくなってしまう住民に対して、できるだけ前もって予定を知らせていただきたい。集まりがあったときにそういう話になるので。

 原発事故から13年半も経つのに、未だにこんなことを地権者に言わせているなんて―。めまいがしました。この方や地区の方々は、もしかしたらすでに土地を手放しているかも知れない、それでも大切なふるさとがブルドーザーに押しつぶされる前にせめて知らせてほしい、知らない間に破壊されてしまうことだけは避けたい、と懇願しているのです。それも痛々しいほどに。

 環境省は、予定はしっかり伝えて進めて行きたいと思っている、と応答しました。

 重要なことがあまりにも報道されていないと感じます。会議にはメディア数社も取材に来ていましたが、これまでどう伝えてきたのでしょうか。私達ももっと関心を持って注視していく必要があると自戒を込めて思いました。

 地権者会会長の門馬さんは、実は本委員会メンバーには入れてもらえていません。それでも毎回東京からわざわざ足を運んで傍聴されています。地権者の代表でありながら発言の機会を与えられず、傍聴席で環境省の背中越しにその向こうのやりとりを見つめているのはどんなお気持ちだろうかと、想像するに余りあります。

 その他、この8か月間の中間貯蔵施設へ搬入する車両事故等についての報告がありました。相変わらず人身・物損事故が続いています。フレコンバッグに封入した焼却灰を移動させる際、吊り上げた紐が切れて落下し、焼却灰が飛散した、というケースや、国道114号線が整備され、スピードを出す車が多くなっている、との注意喚起もありました。皆様お気を付けのほど。


 原発事故とその後始末のために、かけがえのない故郷を奪われ、人生を破壊された人々の苦しみと、原発温存のため容赦なく被害者を切り捨てる国。改めてその残酷な一面を目の当たりにした委員会でした。




 








 

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