放射性物質を無視した汚染土再利用理解醸成イベント

  20231219日夜、原宿駅前の商業施設で環境省の「除去土壌理解への解はあるのか?」と題するイベントが開催されました。

 私達の呼びかけで、全国から7名の精鋭が集まり、有志で会場入口付近で汚染土再利用反対の意思表示をしました。















本イベントは、主催がNewsPics BrandDesin、共催が環境省という一風変わった作りになっています。出演者は以下の通り。
司会

スピーカー













 放射性物質に汚染された除染土再利用のイベントにも関わらず、放射能の話は冒頭に一言二言触れたのみで、ほかはほぼ完全に近く無視されたまま、一体何のイベントなのか首を傾げたくなるような1時間でした。しかし後で手元のメモを見返してみると、慎重に選び抜かれた言葉で巧妙に構成されていることに気づきました。

 最初の1時間は、内閣府の「地方創生」という全国規模の国家的事業をテーマとしたトークイベントでした。地方創生というのは、人口減や衰退に悩む地方の振興を名目に、内閣府から官僚や専門家、企業人などを自治体に送り込んで「課題解決」型ビジネスを行うというものです。一見よさそうにも見えますが、政府の推進したい分野に偏る傾向があり、また派遣される企業などの採用過程が見えないなど不透明な点が気になります。またこれによって中央集権化が進むのではないかという点も気がかりです。結局多くの場合、一部の企業の儲け話で終わるのではないでしょうか。

 本トークイベントの登壇者も然りですが、上記の太田直樹氏は元米系コンサル出身で総務大臣補佐官として地方創生に従事し、前半1時間のトークのあと後半のトークにも再登壇したのですが、「汚染土のことは何も知らなかった」とあけすけに語りながら、地方創生ビジネスの話に終始していました。言わば汚染土理解醸成に不適格な人選であるのは明白です。

 全体として、「科学的エビデンス」「サイエンス」「モニタリング」「安全」などの言葉は出てくるにも関わらず、汚染土再利用に関する具体的な放射性物質の話がほぼ皆無という、いびつで異様な内容でした。
 一方で、「中間貯蔵施設や汚染土再利用実証事業の現場にどんどん足を運んで、見て測定体験して安全を体感」してほしいとか、「NIMBYを超えて、自分の裏庭に持ってきていいよ、くらいに」など、推進側の都合のよいことだけを言っている印象が拭えませんでした。

 国家的事業の地方創生ビジネスを福島でも推進し、その構成要素の一つに汚染土再利用も含めてしまおうという意図ではないかとの疑念が沸きます。地方創生に観光業の振興も大きな位置を占めていますが、飯舘村長泥地区の汚染土再利用実証事業現場を、飯舘村主催の村内観光ツアーに組み込んだのも、環境省側がうまく便乗したように見えます。なぜなら環境省の有識者会議で、あらゆる機会を利用して理解醸成活動を進めていくべきだとの意見は繰り返し強調されており、今まさに環境省が若者を対象としたツアーに力を入れているからです。


 






←長泥実証事業がツアーの見学先に
(主催:飯舘村教育委員会生涯学習課)






 あえて全く関係のない話で批判をかわしつつ、国の思惑が随所に仕込まれた巧妙なイベントだと感じました。

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