中間貯蔵施設内の鉄くず売却へ

  中間貯蔵施設内に山積みされていた鉄くずが売却されることが分かりました。
令和5年度福島地方環境事務所金属くず売払(双葉地区) | 福島地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)

廃棄物の放射能濃度は書かれておらず、空間線量のみ。これまでの発注仕様書によると、事業者が測定した上で、事業者の自主基準値があればそれに照らして処理を引き受けるか否かを判断する。自主基準値を超えた場合は環境省と相談の上、どうすれば処理ができるか話し合うこととされている。自主基準値はない場合も考えられるし、実質あってもないに等しい。産業廃棄物事業者としては、ごみ処理を引き受けることで生活の糧を得ているためである。


 中間貯蔵施設内の鉄くずとは、敷地内にもともとあった建物の解体廃棄物や粗大ごみ、また中間貯蔵施設の付帯施設として建てられた分別施設や工事に伴う廃棄物などさまざま挙げられます。避難指示区域では国が責任をもって処理を行うとされており、対象のごみは「特定廃棄物」と言います。

 2023年11月末までに、すべての分別施設が解体されました。解体された鉄くずは順次売却され、リサイクルされていくものと考えられます。金属は一旦高温で溶かして加工されるため、大量に処理する過程で放射性物質は薄まるとされ、福島県内に30基建設された仮設焼却炉も同様にリサイクルに回されました。(詳細はこちら

中間貯蔵施設内 分別施設のベルトコンベア。前処理した汚染土を土壌貯蔵施設へ運ぶ
解体され野積みされていく鉄くず(2022年11月)
使用済みの錆びた鉄板(2022年11月)

   ⇩一月後にはベルトコンベアが橋脚までなくなっている

以下撮影2022年12月



これらはすべて鉄くずとなった
(プラント解体廃棄物は、プラント設置業者が解体と廃棄物処分まで請け負っていると考えられるため、民間事業者が扱う部分は表に出てきません。本記事中で取り上げているのは環境省が直接扱う部分の廃棄物です。ただスクラップされた後は同じようなルートに上ると考えられます)

 売却されるのは金属くずのみで、コンクリや木くずなどほかのごみはすべて国が処理費を払って委託処理されています。これらも原則リサイクルが課せられています。
 処理する際の放射性物質濃度基準はどうなっているのでしょうか。
 
 (「中間処理基準」p68)

 よく尋ねられるのは、放射能濃度の高い廃棄物は処理されず、国が安全に保管しているのではないかということです。しかし8,000㏃/㎏という区分基準はあっても、これ以上の濃度は処理されないという歯止め規定はありません。あくまで保管、収集・運搬、処理(破砕・焼却)、埋立の各段階における基準や記録保管義務などはありますが、いずれにおいても周辺に居住する住民への影響については年間1ミリシーベルト以下を満たせればよいという努力目標で、非常にざっくりとしたものです。そしてこれが守られなくても罰則規定はありません。

 上記のコンクリくず、木くずなどのリサイクルにおける一般競争入札を見る限り、放射性物質の濃度測定も、濃度が高い場合に処理を引き受けるか否かも業者に一任されている上、引き受けない業者はなかったというのが、過去に環境省に問い合わせた際の回答でした。
 事実上、膨大な廃棄物の濃度測定などを厳密に行って時間を取られ、避難者の帰還が遅れることは避けたい、むしろ決められたタイムリミット内でスピード重視というのが現場のありようだったと思います。

 避難指示区域の汚染廃棄物は、このように業者に丸投げされるか、一部のリサイクルできないものは特定廃棄物埋立処分場(富岡町/楢葉町)に埋立処分されています。
 これが「国が責任を持つ」ということの実態です。
 最新の処理データはこちら。全体の7割はリサイクルされています。

 汚染土も同じように、「再生資材(処理された汚染土)」の作り手、利用者、施設管理者の3者協定を結ばせて、国はそれを確認するだけ、ということが「手引き(ガイドライン)」に書かれ、2020年のパブコメに諮られたところです。2800件余の反対意見にあって棚上げとなっていますが、2024年末頃には再度パブコメが実施される予定です。
 手引きについては順次取り上げていきたいと思います。


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